「ぽっぽのお手帳」(鈴木三重吉)

子ども向けの童話がさらにわかりにくい

「ぽっぽのお手帳」(鈴木三重吉)
(「日本児童文学名作集(上)」)
 岩波文庫

すず子のぽっぽは、
二人とも小さな小さな
赤い手帳をもっています。
この二人は、
「黒」よりもにゃァにゃァよりも、
「君」よりも、
だれよりも一ばん早くから、
すず子のおあいてを
しているのです。
一ばんはじめ、
或冬の氷のはって…。

わかりにくいです。
昨日一昨日と取り上げた
鈴木三重吉の童話ですが、
わかりにくいです。
大人向けの作品の
「千鳥」「赤い鳥」も、
大切なことをあえて書かない手法で
わかりにくいのですが、
子ども向けであるはずの童話は、
なぜかさらにわかりにくいのです。

「すず子」とは、おそらくこの童話を
聞かせようとしている対象の女の子。
そしてそれは
三重吉の娘だろうと想像がつきます。
擬人化された動物たちは、
三重吉の家で飼われている
ペットであるはずです。
「黒」は犬、「にゃァにゃァ」は猫。
ここまでは明確なのですが、
「ぽっぽ」は何?
二人登場しているものの、
それらは区別されていません。
一人のようにしか
描かれていないのです。

読み返してわかりました。
二羽の小鳥なのです(ここでも鳥です。
三重吉は相当な
鳥好きだったのでしょうか?)。
で、小鳥はなぜ
「手帳」をもっているのか?
そもそも
「手帳」は何を表しているのか?
初読したときは疑問だらけでした。

終末に鍵が隠されてあります。
「お母さまは、
 もう先のお家のときに、
 すずちゃんの生れてから
 今日までのことで、
 二人のぽっぽのしらないことは、
 すっかり話して聞かせました。
 ぽっぽは、それをみんな、
 お母さまにいただいた
 小さな赤いお手帳へつけておきました。
 二人が見てしっていることは、
 もとよりすっかり
 かきつけています。」

つまり、
娘すず子が物心つくまでの出来事は
すべて2羽の小鳥たちが
見ているのだよ、
ということなのでしょう。

でも、さらに最後の難関が
待ち構えているのです。
「にゃァにゃァや、黒が来たのは、
 ぽっぽにくらべれば
 ずっと後のことです。
 にゃァにゃァは、すずちゃんが、
 やっとはいはいするころに、
 或おじちゃんが
 もって来て下さったのでした。
 黒は、たったこないだ、
 お家の犬になったばかりで、
 もとは、
 そこいらののら犬だったのです。
 そのつぎに、一ばんおしまいに、
 君がおもりに来たのです。」

一番最初と最後の最後に登場する
「君」とは誰?

この作品を最初に読んで以来、
すでに3年。
何とその謎を解説した
漫画がありました。
次回はその漫画についてです。
to be continued。

(2019.10.17)

【青空文庫】
「ぽっぽのお手帳」(鈴木三重吉)

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